古代中国に由来する、人の一生を季節になぞらえた言葉があります。
- 青春(せいしゅん):15歳~20代まで
- 朱夏(しゅか):30代~50代頃
- 白秋(はくしゅう):50代後半~60代頃
- 玄冬(げんとう):60代後半以降
※明確な基準はなく諸説あるようです。
「青春」は日本でも有名な言葉ですが、実は20代はまだ青春。
社会人デビュー、転職、引っ越し、結婚など、環境やライフステージが大きく変わる年代であり、これからようやく燃え盛る「朱夏」にさしかかろうとする時期です。
来る「朱夏」に向けて、20代はどんな本を読んでおくべきなのか?
20代後半の私が、読んでみて良かったと思える本を6つのジャンルからご紹介いたします!
20代におすすめの本【ビジネス書】
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』(森岡 毅)
著者は、かつてUSJを復活させ、今なお一線で活躍するマーケター森岡毅。
マーケティングの考え方が活きるのは、マーケティングと名前のつく仕事だけではありません。
「何かの魅力を伝え必要性を認識してもらう」活動のすべてに応用できるからです。
そんなマーケティングの考え方を知る上で、まず読むべきが本書。
マーケティングフレームワークや戦略と戦術の違いなど、マーケティングの基本を、USJ復活の事例をもとに分かりやすく教えてくれます。
『統計学が最強の学問である』(西内 啓)
今では、ビジネスパーソンのスキルの1つともされる統計学。
というのも、統計リテラシーはビジネスの意思決定に関わる、論理的思考の肉付けに必須だからです。
しかし、そんな統計学が大きな影響を持ち始めたのは、実はここ最近のことです。
ペンと紙で地道にデータを記録する他ない時代において、大量のデータを必要とする統計学はその力を発揮できずにいたからです。
本書の特徴は、その発展の歴史を通じて統計学の基礎を学ぶという構成です。
それぞれの統計的手法の特長だけではなく、限界もまた存在するという点を理解することができます。
『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(古賀 史健)
社会人になっても、ビジネスメール、企画書やSNSでの発信、LINEのメッセージにいたるまで、文章を書く機会はたくさんあります。
書くことが苦手な人から、もっとうまく書きたいと思っている人まで、おすすめできるのが本書。
著者は、ベストセラー『嫌われる勇気』の著者の1人である古賀史健です。
本書で学べるのは、書くためのマインドと土台となる考え方です。
特に「文章はリズム」という主張は目から鱗。
曖昧になりがちな「上手い文章」を、リズムという観点からここまで明確に言語化してくれる本はなかなかありません。
ライターではなくても、書くスキルがあれば人生は豊かになります。
まずは本書からライティングについて学んでみてはいかがでしょうか?
20代におすすめの本【読書・学び】
『独学の技法』(山口 周)
一般的にはあまり焦点が当たらない「教養ーリベラルアーツ」からの学びについて語られた本。
独学をシステムとして捉え、次の4つに体系化して、学びの方法を教えてくれます。
- 戦略:何を学ぶか?
- インプット:どのように学ぶか?
- 抽象化・構造化:いかに使える知識にするか?
- ストック:どう取り出せるようにするか?
また、本書は「無目的で大量のインプット」を推奨する点もポイント。
「アウトプットとインプットの量は長期的には一致する」ため、「ひらすらインプットした時期がないと、その後長期的にアウトプットし続けられない」と著者は言います。
だからこそ表舞台に出ていく機会が少ない、若いうちから無節操かつ大量のインプットが重要だというわけです。
『読書について』(アルトゥール ショーペンハウアー)
ドイツの哲学者アルトゥール・ショーペンハウアーの読書論。
哲学者が読書を礼賛する本かと思いきや、実は読書ばかりすることへの警鐘を鳴らす本です。
読書するとは、自分でものごとを考えずに、代わりに他人に考えてもらうことだ。他人の心の運びをなぞっているだけだ。それは生徒が習字のときに、先生が鉛筆で書いてくれたお手本を、あとからペンでなぞるようなものだ。
ショーペンハウアー(鈴木 芳子訳)『読書について』光文社古典新訳文庫
もちろん読書を全否定するわけではないですが、「本ばかり読まず自分で考えろ」というメッセージが伝わってきます。
読書の際、常に頭の片隅においておきたいこの考え方を、ショーペンハウアーから学んでみてはいかがでしょうか。
もちろん鵜吞みにせず、自分で頭で考えながら。
『本を読む本』(M.J.アドラー / C.V.ドーレン)
内容を一言で表すとすると、「本のインプットを突き詰めた本」です。
読書本といえば、読んだ知識を定着させるノウハウやアウトプットの方法などが紹介されることも多いのですが、この本は「読む」に一点特化した内容といっても過言ではありません。
本書では、読書のレベルを次の4段階に分けて、それぞれ解説されています。
- 初級読書・・・「その文は何を述べているか」が分かる。
- 点検読書・・・与えられた時間に出来るだけ内容を把握する
- 分析読書・・・本を理解・解釈・批評する
- シントピカル読書・・・同一の主題について2冊以上の本を読む
特に「3.分析読書」までは、学びのために本を読むのであれば、ぜひ身につけておきたい技術です。
20代におすすめの本【哲学・生き方】
『嫌われる勇気』(岸見 一郎 / 古賀 史健)
最近、自己啓発本はあまり好んで読んでいないのですが、そんな私でも実践に値する価値があると自信を持って言い切れるのが『嫌われる勇気』
自己啓発本を1冊だけ選べと言われたら間違いなく本書です。
強い劣等感を持ち、自己嫌悪に陥る「青年」と「哲人」の対話を通して、アドラー心理学の考え方を学ぶことができます。
✔ トラウマ
✔ コンプレックス
✔ 対人関係
このような私たちが抱えがちな悩みに対する、アドラー心理学の処方箋はとても強力です。
若いうちにこの劇薬を摂取して取り込むことで、今後の人生の精神的負担の大部分を減らすことができる
と言っても過言ではない内容なので、ぜひ読んでみてください。
『人生の短さについて』(セネカ)
約2000年にわたって読み継がれてきた、古代ローマストア派の哲学者セネカによる人生論。
社会人になると、平日は仕事、休日も「何かしなくては…」とせわしなく動き回る。
そんな日々を過ごす人も多いのではないでしょうか。
そんな私たちをまるで見ているかのように、セネカはこう言っています。
みたまえ。彼らが、どれだけ長い間、銭勘定をしているか。どれだけ長い間、悪だくみをしているか。どれほど長い間、心配ごとをしているか。どれほど長い間、ご機嫌とりをしているか。どれほど長い間、ご機嫌とりをされているか。どれだけ長い間、裁判で訴えたり、訴えられたりしているか。どれほど長い間宴会をしているかーいまや、宴会に出ることが仕事になってしまっているではないか。
セネカ(中澤務 訳)『人生の短さについて 他二篇』光文社古典新訳文庫
セネカが本書を通して訴えたいのは、
「他人のために多忙を極める人々にとって、人生はとても短い」ということ。
今後の人生で後悔しないために、若いうちにぜひ読んでおくべき1冊です。
『暇と退屈の倫理学』(國分 功一郎)
社会人になると、学校に通っていたころと違い、周りの環境の変化が乏しくなります。
代り映えのない毎日に「何となく退屈だ」と感じる方も多いのではないでしょうか。
本書は、一言でいえば「私たちにとって暇とは何か、そして退屈とどう向き合うべきかに答える本」です。
哲学、考古学、生物学、社会学などの様々な知識を総動員し、人類が長い間直面してきた「退屈」というテーマに挑みます。
本書をしっかりと読み切った暁には、「何となく退屈だ」を克服するための自分なりの答えを得ることができるはずです。
20代におすすめの本【小説】
『推し燃ゆ』(宇佐見 りん)
彗星のごとく現れ、弱冠21歳で芥川賞を受賞した宇佐見りんの『推し燃ゆ』
冒頭「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」から始まる本作は、各所に現代らしさが散りばめられています。
本作で登場するのは、単に「推し活」に明け暮れるに留まらず、「推し」を自身にとっての「背骨」だと言うのあかり。
あかりの生き方を通して、私たちが抱える生きづらさが見事に表現されています。
あなたにとっての「背骨」とは何でしょうか?
150ページというコンパクトなボリュームで非常に読みやすいので、ぜひ読んでみてください。
『モモ』(ミヒャエル・エンデ)
ミヒャエル・エンデによる児童文学の名作。
「灰色の男たち」が人々から奪った時間を、主人公の少女モモが取り返そうとする、シンプルで分かりやすいストーリーです。
しかし実はこの物語は、効率的な時間管理を求め、非生産的な活動を戒める現代社会を風刺した作品でもあります。
時間をはかるにはカレンダーや時計がありますが、はかってみたところであまり意味はありません。というのは、誰でも知っている通り、その時間にどんなことがあったかによって、わずか1時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。なぜなら時間とは、生きるということそのものだからです。そして、人の命は心を住処としているからです。
ミヒャエル・エンデ(大島 かおり訳)『モモ』岩波少年文庫
最近は「タイパ」という言葉がありますが、生きることには「パフォーマンス」には還元できない価値があるということに気づかせてくれます。
大人になってから読むとまた違った味わいがあるため、20代でぜひ読んでみて欲しい1冊です。
『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)
ロシアの文豪ドストエフスキーの世界文学屈指の名作。
恋愛、家族、殺人、社会、宗教といった深遠なテーマを取り扱い、ロシアの文学界だけではなく、世界の哲学・社会思想にも大きな影響を与えました。
その魅力はなんといっても、性格の全く異なるカラマーゾフの3人の兄弟です。
- 熱血漢の長男:ドミートリイ
- 冷徹な次男:イワン
- 敬虔な修道者の三男:アリョーシャ
極端な性格の3人なのですが、不思議なことに読んでいるとそれぞれ少しずつ共感できる部分が出てくる。
光の三原色のように、この3人の性格を少しずつ取り出して配合すれば、すべての人間の性格が再現できるではと思わされる、真に迫る人物描写は見事としか言いようがありません。
新潮文庫だと3冊、光文社古典新訳文庫だと5冊分とかなり長いですが、一度腰を据えてじっくり読んでみる価値は十分にあります。
20代におすすめの本【生活・健康】
『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長)
著者は、YouTuberとしても活躍する両学長。
お金の話といえば資産運用がイメージされがちですが、資産運用についての情報発信はポジショントークが多すぎる、、
投資に十分なリソースを割けない、専業投資家ではない私たちにとって、いきなり資産運用に深入りするのはリスクが大きいと感じます。
その点本書は、半分くらいのページを「節約の方法」に割いているのがポイント。
お金に困らない20代を過ごしたいなら必読です。
『運動脳』(アンデシュ・ハンセン)
著者は、『スマホ脳』で有名なスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン。
社会人になると多くの人は座りっぱなしで、全く運動しなくなってしまいます。
もちろん、「運動が体に良い」なんてことは誰だって知っていることです。
しかし実は運動は、脳にとっても最高のエクササイズだということを知っていましたか?
本書は、運動が脳にどれだけ良い影響を与えるか、科学的知見をもとに分かりやすく説明してくれます。
運動の必要性を感じながら何もできていない方は、ぜひ本書を読んで運動のモチベーションを上げてください。
『行動最適化大全』(樺沢 紫苑)
著者は、精神科医としての知見と圧倒的読書量を活かし、『アウトプット大全』『インプット大全』『読書脳』など、これまで40冊以上の著書を世に出してきた樺沢紫苑。
本書は、身体や心理学の研究に基づき、私たちの日常の最適な生活習慣を教えてくれる本です。
特に幸せに関する部分は必見。
幸せといえば哲学的テーマになりがちですが、精神医学では3つの脳内物質の働きに関係していると言われているようです。
- セロトニン ⇒ 健康の幸福
- オキシトシン ⇒ 愛・つながりの幸福
- ドーパミン ⇒ お金・成功の幸福
自分が満たされていない幸福に合わせて、どの脳内物質に働きかけるべきか。
それを見極め、適切な生活習慣を実現することで、幸せな人生へと近づけるわけです。
本書のすべてを実践するのはなかなか難しいですが、いくつかだけでも試してみる価値は十分にあります。
20代におすすめの本【教養】
『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ)
1冊で人類の歴史を網羅できるのが本書『サピエンス全史』
イスラエルの歴史学者・哲学者のユヴァル・ノア・ハラリが、あらゆる知見を駆使して、壮大な人類の旅路を記した大作です。
自然の一部だったホモ・サピエンスはいかにして現在の繁栄に辿り着いたのか?
そこには、「認知革命」「農業革命」「科学革命」の3つのターニングポイントがありました。
ボリュームはありますが、ページをめくる手が止まらない面白さがあります。
『タテ社会の人間関係』(中根 千枝)
日本人について論ずる著書はたくさんありますが、解像度が高いと感じたのが本書。
本書は、人間関係には「場」と「資格」の共有という2つのあり方が存在し、多くの海外は「資格」、日本は「場」をとても重視すると指摘します。
- 専攻
- 職業
- 大学名
- 会社名
確かに日本において、自己紹介や就職・転職活動等、多くの場合において問われるのは「場」の方です。
社会や組織の構造、人々の慣習に至るまで、「場」を重視した「タテ社会」が支配している。
こう指摘して明快な日本論を説く本書は、これから社会で生き抜いていく上で、一度は読むべき良書です。
『科学哲学への招待』(野家 啓一)
「科学哲学」というのは、「科学という知的活動を対象とした哲学的考察」です。
現代において、あまりにも自明である科学への信頼ですが、「科学哲学」というのはその科学を相対的に分析する分野といっても差し支えないでしょう。
科学哲学に興味はない方でも、本書の第一部「科学史」は非常に有益です。
ガリレオやニュートンといった科学者が「何を発見したか」だけではなく、「そこにどのような意義があるのか」が分かります。
20代から本を読むメリット
想像力が豊かになる
本を読むと想像力がアップします。
私たちが直接体験できることには限界がありますが、読書をすることで自分の世界を広げることができるからです。
こうした読書は、自己や他者、社会、自然といった、この世の中に対する表面的な理解から解き放ってくれます。
複雑で重厚なありとあらゆる事象を、解像度高くとらえることができるようになるのです。
そうすると、他者の行動、組織の意思決定、社会の流れ、自然現象などの裏側にあるものを推し量る能力が身につきます。
それはつまり、1を聞いて裏側にある10を想像できるようになるということ。
想像力が豊かになれば、人生そのものが豊かになることでしょう。
コミュニケーション能力がアップする
本を読むことは、コミュニケーション能力の向上にも繋がります。
なぜなら本を読むとは、コミュニケーション能力の下地を鍛える行為でもあるからです。
- 伝わりやすい、正しい言葉に触れることができる
- 相手の言葉を受け止め理解する
伝わりやすい、正しい言葉に触れることができる
日常会話やSNS、ネット上の発信とは異なり、編集、校正を経た書籍に書かれているのは、基本的には誤りのない言葉です。
また、読者を想定した本の文章は、伝わりやすい言葉選びをしています。(必ずしもそうではないものもありますが)
そうした言葉に触れ続けることは、正しい言語のシャワーを浴びることであり、無意識的に言語能力が蓄積されていくでしょう。
相手の言葉を受け止め理解する
コミュニケーション能力とは、一方的に話し続ける能力ではありません。
相手の意図を把握して、的確な回答を返す能力ですから、「相手の言葉を受け止め理解する」のが大前提です。
読書とは一方的に相手の言葉を聞き続けることに等しい行為です。
つまり読書をしている人は、日常的に「相手の言葉を受け止め理解する」訓練をしているわけです。
終わりに
ここまで20代におすすめの本18選を紹介してきました。
- 『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』(森岡 毅)
- 『統計学が最強の学問である』(西内 啓)
- 『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(古賀 史健)
- 『独学の技法』(山口 周)
- 『読書について』(アルトゥール ショーペンハウアー)
- 『本を読む本』(M.J.アドラー / C.V.ドーレン)
- 『嫌われる勇気』(岸見 一郎 / 古賀 史健)
- 『人生の短さについて』(セネカ)
- 『暇と退屈の倫理学』(國分 功一郎)
- 『推し燃ゆ』(宇佐見 りん)
- 『モモ』(ミヒャエル・エンデ)
- 『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)
- 『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長)
- 『運動脳』(アンデシュ・ハンセン)
- 『行動最適化大全』(樺沢 紫苑)
- 『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ)
- 『タテ社会の人間関係』(中根 千枝)
- 『科学哲学への招待』(野家 啓一)
読書から得たことは、きっとあなたの価値観に根をおろし今後の人生の糧となります。
気になる本からぜひ読んでみてください!
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